
馬頭琴
ばとうきん
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モリン ホール
Morin khuur

モンゴルの民族楽器。
チェロや中国の二胡と同じ、弓でこすって音を出す。
弦を支えて響かせるための胴体の部分にブリッジ(駒)は二つある。
多くの弦楽器が胴部分にブリッジを採用しているが、馬頭琴はネックの部分にも移動できるブリッジが付いている。
弦は2本。一般的な弦楽器とは弦の張り方が逆で、1弦が太くて低音、2弦が細くて高音である。(左利きのポールマッカートニーのギターも張り方が逆だがこれは特別)
頭部分が馬をかたどっているだけではなく、弓は例のごとく馬のシッポを使っている。弦も馬のシッポを束ねて使っていたこともあったようだが、現在ではナイロンの弦が主流らしい。
馬頭琴はチェロとは違い雑音が多いという記述を読んだことがあるが、チェロも雑音が混ざっている。弾いている楽器の近くで聴くと雑音がよ聴こえる。
雑音は微妙である。
いい雑音といやな雑音がある。チェロの音の底で微かに聴こえるスーという弦と弓が摩擦する音。私は好きである。ギターでは左手が弦を移動するときキュキュッとなる音。これもいい。
人が弾いているという実感としての音。どんな楽器でも発する音には美しい雑音が含まれているのだ。
この雑音、確かに奏者によって大違いであるようだ。うまい奏者はいい雑音を含ませる。雑音も楽器の持ち味なのだから。
馬頭琴はチェロとは違い雑音が多いのかもしれない。だけど決して馬頭琴がチェロに劣るという意味ではない。
また、馬頭琴のことを「草原のチェロ」といったりするらしいが、チェロが上から目線で馬頭琴を見ている言い回しだね。
褒めてるのかどうなのか、これまた微妙。これこれチェロ、高いところから降りてきなさい。
モンゴルでの呼称「モリンホール」は、日本のカタカナ表記では「モリンフール」と記されることもある。地域によってはイケル ikhel とも。

私家版 楽器事典
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がっきじてん
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