楽器一覧(体鳴楽器)
スチールパン Steelpan

スチールパン steelpan

スチールパンは、1枚の鉄板なのに凹凸をつけてる部分がそれぞれチャンとした音程が出るようになっている。トリニダード・トバコでドラム缶を叩いて作られたのが最初。

新しい楽器を作った場合、「発明」という言葉がよく使われるが、どうもしっくりこない。
例えばピアノ。ピアノは発明か?・・・新しい機構を作り上げたその部分は発明になるかもしれないけどピアノそのものは発明ではなく「開発」だろう。 「大正琴を発明したのはだれそれ」という記述を目にすることもあるが、これは発明ではない。
楽器は新しい発想でいくらでもオリジナルのものを作ることができる。 「ネックが4本ある24弦ギターを作ったぞ、これを発明したのは・・・・」なんてのはおかしい。鉄板を100枚使ってピアノより音域が広い鉄琴を作っても発明ではない。

スチールパンは「アコースティック楽器では20世紀最大の発明」と云われている。
これは納得である。「個体の振動」「膜の振動」「弦の振動」「空気そのものの振動」。 アコースティックの楽器ではこの4分類であり、もう一つ追加するなら「弁の振動」が加わる。 スチールパンはどれかひとつに当てはめようとしても当てはまらないのに、しっかりと音程が出る。これは発明と呼んでもおかしくない。
スチールパン steelpan
1台だけで演奏しても不思議な音色であるが、これを何十台も並べてオーケストラとして演奏したならば、今までにない「新しい音」になり「新しい音楽」になる。
中南米の人たちのリズム感というのは並外れて優れている。もしくは私のようなオヤジは並外れて劣っているのかもしれないけど・・・ ともかく、トリニダード・トバコの人たちがスチールパンの合奏を始めると「音のサーカス」である。何十人もの人間が、ここまで音のカタマリとして一つになれるのか・・・。 日本の和太鼓ユニットは「根性」みたいなのがどこかにあったりするので、私には、ちょっとばかり抵抗感がある。 トリニダード・トバコの人たちのスチールパン演奏は「楽しい・面白い」だけで演奏しているように見える。音楽はそうでなけりゃと思うのだけどね。
いくら、新しいものを発明してもひとりよがりで、世間に普及しなかったら発明発明とさわいでも虚しいだけ。スチールパンは世界中で認められた驚きの新楽器である。 「20世紀最大の発明」は決して大げさではない。


ハンドパン(ハングドラム)

私家版 楽器事典 / 楽器図鑑
gakki jiten