伶人時元が物語
武吉という笙作りの名工のところへ、ちょっと貧相な女がやって来た。
舌(リード)が無い笙を持ってきて売りいという。
武吉はいくらで売りたいのかなと尋ねたところ、おまかせすますと女はいう。
なかなか良い笙だったので、絹を二疋渡した。
女は喜んで帰っていった。
ところがた武吉が、そのよくよく見ると、まさに名品も名品、天下無双の笙であることが判った。
武吉は、あわてて、その女を追いかけた。
やっと追いついたのだけど、呼び止められたびっくり。安物の笙なので返品されるかと「高貴な旦那様は、一度決めたことに言い直しなんかしないでくださいよ」と。
「いやいや、これは天下無双の笙だ、絹を二疋では申し訳ない」
ということでさらに絹を三疋渡した。
女は喜び帰っていった・・・・とか。
疋とは:織物の長さを表す単位。反物2反分の長さを1疋という
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