フレンチホルンがフレンチホルンの音を出す構造
マウスピースが細長くて深いことと、管が出口に向かってだんだん太くなり、最後に不似合いなくらい大きなベルが音の出口。この構造はフレンチホルン独特のフンワカしてるのに堂々とした心地良い音質を出すのに役立っている。
そしてもうひとつの特徴として楽器の構え方がある。普通、楽器というものは、聴いている人に向かって音を発する。でも、フレンチホルンは斜め後ろ向きだ。
フレンチホルンの音質を牧歌的だとか表現したりするけど、このあたりにもワケがあった。ベルから直接に音が届くよりも、いったん後ろの壁にぶつかる音響効果とあいまって広く音が響く。
芯があるのに丸くて広がり感のある音。なにかしら遠くで聴こえるような音・・・そりゃそうだ。反射して聴こえるなら遠くで聴こえる音になる。
ゲシュトップフト
gestopft はドイツ語なので、読みづらくて舌を噛むような言葉。ホルンのベルに右手を入れて音程を変える奏法のこと。18世紀の半ば頃らしいが、まだバルブという高度な機構がなかった時代。
ドイツ・ドレスデンの、とある宮廷ホルン奏者は、自然倍音しか出ないホルンを、このヘンテコリンな方法で音程が変わることを発見した(とはいうものの他のラッパでも似た方法で音程を変えることは以前からやってたらしいけど)。
ベルのなかに手を深く入れて隙間を空けておくと音が低くなり。ベタッと塞いでしまうと高い音が出る。
現在のバルブ付きホルンも、そのころの演奏方法を取り入れており、右手は穴に、左手はバルブのレバーに、と役割は変わっていない。
あ、そうそう。ゲシュトップフト などと言いづらい言葉より、英語 + 日本語で「ストップ奏法」という言葉があるんだって。でも、クラシックをやっている人は A B C をアー・ベー・チェー とか 言うもんだから
音楽のこととなるとドイツ式単語で話すのかな。いや、日常会話でも「チェーマン」というのは「1万円」のことだったり・・・。