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笙
しょう
この仲間の楽器は、東南アジアでは民衆の楽器として愛奏されている。日本へは奈良時代、雅楽とともに中国より伝来した。そのためか、日本国では「格式高き吹きもの」であり宮廷音楽などには使われるが、フォークミュージックには浸透しなかった。和風結婚式では(録音された)音を聴くことはあれど、本物の笙は一般市民にはちょっと遠い存在。
しかしまあ、この楽器は独特の構造を持っており、音が出る仕組みや演奏方法は他の楽器にはない ワンダー・インスツルメントなのですよ。
- 17本の竹筒を匏(ふくべ)とか頭(かしら)とか呼ばれる空気室に差し込んである。音が出るのは 15本だけで2本にはリードが付いていない。匏とは、ヒョウタンやユウガオなどの果実のこと。日本の笙の空気室は木製削り出し作っているので、匏を使っているわけではない。笙の発祥の地(と思われる)ベトナムやタイの楽器は空気室に匏を使っている。
- 小さな板状の金属リードが音源で、吹いても吸っても同じ管で同じ音が出せる。なので途切れなく音を出すことが可能。ハーモニカも吹く吸うで音を出すが、それぞれ違うリードで違う音である。笙とハーモニカは共にフリーリードだけど、リードの取り付け方が違う。笙の場合は、リードのことを簧(舌/した)と呼ぶ。
- それぞれの管は演奏中いつも空気の圧力を受けている。でも、指穴を開けている管は共鳴せず音が出ない。指孔を押さえると管が共鳴する長さになるのでリードがふるえて音が出る。
- 複数同時に鳴らして和音を出すことができる。笙ではこれを合竹(あいたけ)という。合竹は 5〜6音を同時に鳴らし、この組み合わせは11種類。西洋音楽の和音の理屈からしてみると全くの不協和音である。笙の音を「天から差し込む光」と形容するようだが、この着地点のない空中を彷徨うような和音の響きは確かに天空のイメージ。高い音なので「天空の光」であって、この半音が重なったぎゅうぎゅう詰めの和音が低い音で響くと気持ち悪いかも。
- もちろん単音でも音が出るのでメロディ演奏ができる。笙ではこれを一竹(いっちく)という。
- 伝説の鳥、鳳凰(ほうおう)が翼を立てて休んでいる姿に見立て、この楽器は鳳笙(ほうしょう)とも呼ばれる。格式高きイベントで使う格式高き楽器ゆえ、このような名称も生まれたのだろう。でもね、翼を立てるといっても立てすぎで、肩こりを治すのにストレッチをしている鳳凰といった感じがしないでもない。
・・・というわけで、だれがこんな音響技術者も物理学者もビックリの楽器を考案したのだろう。一般民衆楽器にこの仕組を応用しないのはなぜだろう・・・ The answer is blowin' in the wind ... これは今後の課題としよう。
竽 (う)
私家版 楽器事典
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楽器図鑑 gakki jiten
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