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ガイゲ
Geige

ドイツではバイオリンのことをガイゲ(geige)というが、このガイゲという名前、実は「もも肉」のことだった。
フランス語でジーグ(gigue)はシカのもも肉にことで、レベックがもも肉に似ていることからこんなニックネームが付いた。 ドイツやオーストリアではこの名称を現在も引き継いでおりバイオリンをガイゲと呼んでいる。
本来のガイゲはレベック系の擦弦楽器であり、現在のバイオリンはビオラ/フィドル系なので、楽器そのものの系統は別ものである。 ガイゲは擦弦楽器の総称として使われたようで、後にバイオリンもガイゲと呼称されるようになったのでだろう。

シカのもも肉に似ているレベック
シカのもも肉に似ている


バイオリンはドイツ語でガイゲ(geige)
バイオリンは
ドイツ語でガイゲ(geige)


世界楽器大事典より引用させていただく
さて、このガイゲ、実はビオールやフィーデルとはまったく別系統のものである。
本来のガイゲは、フランス語のジークから導かれたもので、11世紀ごろからジブラルタルの海を越えてサラセン文化とともに、スペインに入ったラバーブ系統の楽器である。
ラバーブは、スペインで「ラーベ」とか「ラベル」、ポルトガルでは「ラベーカ」「レベーカ」、イタリアでは「リベーカ」などと呼ばれた。
これは、梨形(琵琶の小形)の胴で表面は平面であり、裏板は、くり胴になっていて、わき板なしに張り付けられていた。
弦は最初は1弦のものも描かれているが、2弦、3弦となったようである。
これは、農民ダンスの伴奏などに愛用されるようになり、その形が鹿のもも肉のようだというのでジーグというニックネームがつけられた。 そして、この楽器の伴奏で踊るダンスもジーグと呼ばれ英国などで大流行した。バッハの舞踏組曲に出てくるジーグは、それである。

楽器分類で有名なザックスは弓でこすって音を出す楽器をふたつに分類している
・脇板が無くて削り出した胴に表板を取り付けてある2段重ねの楽器
・裏板、脇板、表板があって3段重ねの楽器
この二つは系統が違うということは前述の通りであるが、擦弦楽器はヨーロッパ発祥ではなく、ヨーロッパへは北アフリカとか西アジアから持ち込まれたようである。 いうなれば現在のバイオリンはヨーロッパ人がモノマネで作ったもの。アマティもストラディバリも何百年ものアフリカ・アジアの知恵をもとに成り立っているといえる。

現在のバイオリンをドイツでガイゲと呼んでいる。ただそれだけのことと言えばそれまでなのだけれど、 その由来をたどり、さらに時代をさかのぼれば擦弦楽器の歴史の奥深さや、人間の音を楽しむ本性が見えてくるような気がするのである。


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gakki jiten