まさか、本屋の店頭で量産されたテルミンが売られているなんて、レフ・テルミン博士は夢にも思わなかっただろう。
本屋やコンビニで売っテルミン。しかも2,000円だぞ。
会社の帰りにタバコを買うためローソンへ立ち寄った。雑誌の棚をふと見たら「テルミンで音を奏でよう」と印刷されたパッケージが陳列してある。たしかジュンク堂書店で見たのと同じもの。
どうせオモチャなんだろうけど、と思いながらも買ってしまった。
マイルドセブン300円。テルミン2,000円。
パッケージを開けると、さすがにオモチャだった。想像以上にオモチャだった。パッケージは「分厚いA4ファイル」くらいの大きさなんだけど、テルミン本体は片手に乗るほどのチッコイもの。
テルミンは音程アンテナと音量アンテナがついていて手を触れずに演奏できる電子楽器なんだけど、このオモチャ・テルミンは音量アンテナは飾りとして付いているだけで機能をはたさない。
裏を見ると MADE IN CHINA の文字。単四乾電池が4本必要だが別売り。
このページには、昔はとても苦労して作り上げた高価な機器も、昨今の集積回路や電子技術の発達で、
こんなにも安価で高性能な、機器が作れるようになった・・・とか、そういう内容を書くつもりでいたのでだけれど、どうにもこうにもこのテルミン、オモチャ過ぎたので、文句たれの執筆になってしまいそう。
なによりも、どんな音がするのか、楽器としての性能はどうなのか、ということですよね。
ピーピーとかキューキューとかいう音がする。確かにアンテナからの距離で音程は変わるのである。本の1mmで1音変わることもあるし、数cmで半音くらい変わることもある。なかなか難しい。
そういえばバイオリンでも最初はちゃんと音がでない、確かな音程なんて出やしない。ハイポジションなら、ほんの数mmでの指の置き方で音程が変わる。
それを思えばこのオモチャテルミンも小学生のころから練習をつめば素晴らしいテルミニストになるのかもしれない。
でも、私はテルミニストをあきらめることにする。
「テルミンで音を奏でよう」というキャッチコピーは何かおかしい。
「音楽」を奏でるのではなく「音」を奏でるという表現は、音楽演奏はできないけれども音はでますよ、と 過大広告にならないようにしたためですかな。
少なくとも私には「音」は奏でられるけれども「音楽」は奏でれれそうにない。
「誰にでもすぐに音が出せる!」の表現も、遠慮がち。やっぱり「音階」が出せると表記していない。
「幻の電子楽器」というのも変。だってマボロシではないもの。
1920年、ソ連(現在のロシア)レフ・セルゲーエヴィチ・テルミンが作り上げた音階のでる装置であり、歴史的にマボロシな部分はない。
アメリカのシンセサイザ開発で有名なロバート・モーグもテルミンに興味をもち、最新の電子技術で近代的テルミンを作っている。英語ではThereminvox。
ツッコミばかりになって恐縮なんだけれど、付録の取扱説明書に印刷されている練習曲「ハッピーバースデー」は正式名は「ハッピーバースデートゥーユー」ですよ、というのはサラッと流しておくとして、
楽譜が間違っている。4分の3拍子なのに、1小節に4拍分の音符が書かれてたりしてるよ。
というか、そもそもテルミンのような楽器は、ドレミとか、楽譜とかを見ながら練習してもほどんど意味がないと思うんだけど。口笛と同じようなものだもの。知ってるメロディをわざわざ楽譜を見ながら口笛ふくかいな。
・・・はい、はい、かようなわけで、文句たれの執筆になってしまいました。
(2010年7月)
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