中国製のチェロを買った。
Webでの通信販売でなんと2万5千円だ。一桁間違っているわけではない。25万円ではなく、2万5千円である。弓もちゃんとついているし、簡素ながらソフトケースもついている。
どうにもこうにもビックリ価格であるし、この値段にしてはよく出来ている。
日本の製造メーカーは安価な中国製の部品を買ったり、加工を委託したりして原価を下げることに精を出したりしてるが、中国で作った部品は品質が悪く苦労が耐えない。
高くなるけども、致し方なくやはり日本で部品を作るしかないということで中国製は断念したということも多々ある。
中国製は品質が悪い。確かにその通りなのだけれと、考えてみれば、日本の楽器はそもそも中国から日本に伝来したものがほとんどだ。
紙に文字を書くという根本的な文化もしかり。「子 曰く・・・」という教えも、学問も大陸から学んだのではなかったか。
日本のものづくりは世界レベルではトップクラスであるが、中国を馬鹿にしてはならない。おそらく近いうちに日本のものづくりのレベルに達するだろう。長い歴史の中、日本人は中国人にたくさんのことを教えてもらったのだ。
中国メーカーの多くは、そしてその従業員は品質がよくなければ世界に通用しないという思いがあまりないようで、自分が勤める組織が発展すれば自分もよくなるという概念が薄いようだ。だから部品製作も組み立ても適当にやって楽をしようということになる。
だけど、個人個人の製作能力が低いわけではない。「こうすればいいものができる」「品質がよくければみんなによろこんでいただける」という思いがしっかりと分かれば、日本にはすぐに追いつく。だって中国はあらゆる面で日本人の先生だったのだもの。
中国製のチェロにもどろう。
2万5千円でこの品質はたいしたものだ。ナット(糸巻き部からの弦を配置する部分)の弦溝がゆがんでいるのと、A弦(一番細い弦)が最初からついていなかったので弦が3本しかなかった。さすがに(?)中国製というところか。
でも、ちゃんとチェロだ。
輸入販売をしている諏訪楽器の対応が早いのにも驚いた。
弦がついてないことをメールで送ったのだが、1時間ほどすると電話がかかってきた。「申し訳ありません、すぐに宅急便で弦を1セット送らせていただきます」との連絡。
チェロの弦はセットで買うと高級なものは5万円はする。1本、1万円以上だ。もちろんこれはヨーロッパの高級ブランドの弦なので、単純に比べるのはちょっと違うかもしれないが、チェロ本体が(もちろん弦もついて)2万5千円で、弦だけが5万円というこの格差はおもしろい。
かくして、中国製のチェロは立派にチェロであって、立派にチェロの音がする。私はうまくチェロを弾けるわけではないが、ある程度は音の良し悪しは分かる。
幾千年の歴史を経て、再び日本は中国を師とする時代が来るのかもしれない。
(2009年4月)